もう上手に愛すのは無理です






私は昔から貴方に憧れていました。お座成りの言葉や社交辞令なんて、貴方には必要無いのでしょう。ずっと嘘を吐き続けている私にとって、素直に生きている貴方は目標であり、私にとっての『太陽』でした。

それなのに貴方は最後に嘘を吐きました。その瞬間に私の羨望であった貴方は、私の中で粉々に砕け散ったのです。何かが崩れ落ちる音を聴きました。嗚呼、貴方までもが私の気持ちを等閑にするのですか?


だって私の命はもうすぐ消えるというのに!(それを貴方は識っているというのに!)
それとも、だからこそ伝えたのですか?(私の気持ちを識っているから、嘘を吐いたのですか?)


すべてが嘘だと、もう一度微笑んでくれさえすれば、私は再び貴方を愛せるのでしょう。だから、「お前が好きだ」なんて言わないで下さい。お願いですから、その言葉を撤回して下さい。私の記憶を、私の中の私を好きな貴方を、抹消して下さい。だって、好きだなんて言われたら、死ぬのが怖くなってしまうじゃないですか。醜いほどに、生に縋り付いてしまうじゃないですか。

(ねえ、ピオニー。その科白が偽りで在ることを望むのは罪ですか?)

もしも貴方が罪だと言うのなら、もう、上手に愛するのは無理です。貴方が肯定する限り、私の中の死の概念は崩れ去り、貴方への未練を遺しながら惨めに死んでいくことと成りましょう。




さようなら、愛していましたピオニー。