まばゆい少年期
ティエリアは誰よりも完璧を求めるが故に、自分は勿論、他人にもそれを要求してしまうところがある。特に自分には厳しく、任務を失敗した時の自虐的さは、こちらが心配になってしまうほどだ。強がって弱さを隠すティエリアの幼さや不安定さを、可愛いと思う。刹那やアレルヤを見るのとは違う目で、ティエリアを見ているのは確かだ。年下の彼らは皆危なっかしいが、ティエリアは、しっかりしてそうでいて放っておいたら崩壊してしまいそうな、儚い危うさがある。
「ティエリア…」
「っ、んぅ……っ」
まるで獣のようにティエリアに覆い被さり激しく揺さぶると、くぐもった喘ぎが漏れた。自分の指を噛んで声を我慢するくらいには、羞恥心があるらしい。細腰を掴んで一層深く犯してやると、無駄な肉の付いていない綺麗な白い足が、ピンと伸びた。
任務のあと、俺達は通過儀礼的に交わるようになっていた。男との経験はなかったが不思議と抵抗や嫌悪感はなく、むしろ中性的な柔らかさがあるティエリアの身体は魅力的で、すぐに俺を夢中にさせた。
始まりは、最重要機密であるナドレを世界に晒してしまったあの日だった。プトレマイオスに帰還してすぐに、泣き腫らした目で「罰を与えて下さい」とティエリアは懇願した。どうして俺を選んだのかは知らない。もちろん戸惑ったが、弱さを露見したままのティエリアは、どこまでも儚げで消えてしまいそうだったから、俺は手を差し伸べた。
俺にとってティエリアとのセックスは戦闘の興奮が醒めない時のトランキライザー代わりになっていた。ティエリアは抵抗しなかったし、何より俺がしたかったから、ずるずるとこんな関係を続けている。弁えてるつもりだったんだけどなァと心中で呟くが、ティエリアに夢中になっている事実は変えられない。
「ロックオン…もう…っ」
達する直前にティエリアは律儀にも俺に報告をする。そんなところも堪らなく可愛くて、愛しかった。
「…ああ、いいぜ、出せよ」
中心を優しく撫で上げてやると、咽喉をヒクつかせ、小さな喘ぎと共に精液が飛び散る。自分の精液でヌルヌルになったティエリアの薄い胸を舐めると、より敏感になった身体がひくりと跳ねた。
「…ああ、繋がったまま身を屈めると、ティエリアのこんなに深いところまでいけるんだな」
「ニール、ニール…!」
始まりがあるのなら必然的に終わりがくるのに、俺はそれを否定したかった。ソレスタルビーイングによる武力介入により世界が変わったその日、ティエリアと袂を分かつことになるだろう未来を否定したかったのだ。
セックスのあと、代わり代わりにシャワーを浴びた。先に汗や諸々を流したティエリアは、俺がシャワールームから出てきたときには深い眠りの中に落ちていた。コットンシャツを羽織っているだけで、ほとんど無毛の脚は無防備にもベッドの上に放り出されている。
ああ、目に毒だ。せっかく醒ました熱がぶり返しちまうとも思ったが、十代ならともかく、二十代も半ばを過ぎようとしている大人が、生足を見ただけで…って何だか情けないよな。何より自分の性欲の強さに驚いた。前はこうじゃなかったのに、俺はいつから狼さんになったんだ。
「…ん、ニール…」
可愛い寝言は聞かなかったことにしてベッドに潜り込む。ティエリアに上掛けを掛けてやると、途端に焦燥感が胸に込み上げてきた。隣ではティエリアが泥のように眠っているが、この愛らしい寝顔を、あと何回見られるのだろうか。
「…嫌、だな」
空気だけの呟きは、案外大きく響いたが、疲れ果てているティエリアは起きない。寝顔だけではなく、笑顔も泣き顔も怒った顔も、見られなくなるのは、ひどく惜しいと思った。博愛主義者で、誰かひとりに執着するなんて無いと思っていたが、俺もまだまだ若いということか。ティエリアは俺に執着はしないだろう。だが、俺以外のマイスターやクルーに抱かれることはないと断言出来るくらいには、ティエリアの特別であると自負している。
こんな、子供に。だが、誰にも渡したくないという思いが生まれ始めていることは否定出来ない。それでいいじゃねぇか。俺はティエリアを完全に愛してはいなくても、愛し始めている。それで、いい。
そんなこじつけじみた誤魔化しも、ティエリアの天使のような寝顔を見ていると無意味に思えてしまう単純な自分に、思わず苦笑いが漏れた。