タイムリミット
くたびれた白衣はくしゃくしゃになって、足下に追いやられていた。それでも、ベッドの上に居座っている分、まだマシなのかもしれない。ハンガーに掛けて置かないと皺になってしまうな、と頭の片隅で考えはするが、勿論そんなことをしている余裕など無かった。欲望を抑え付けることなんて、出来る筈が無い。
「…ふ、んぅ……っ」
噛みつくようにキスをすると、甘ったるい匂いが鼻に抜けていった。 いつの間にかロイド先生の舌が僕の口内に侵入して、誘うように蠢いている。 僕は堪らなくなって、角度を変えながらロイド先生の口内を夢中で貪った。
「ス…ザク……」
唇がずれる度に、ロイド先生は甘く僕の名前を呼ぶ。それだけなのに、じん、と中心が熱を孕んでいくのを感じて、僕は反射的に唇を離した。溢れ落ちる唾液が、唇を濡らしている。舌で舐め取る顔付きはぼうっとしていて、どこか淫靡だった。
「は…はぁ……っ」
「ロイド、せんせ……」
「……ぁ…んふ、スザク君、キス上手になったねぇ……」
「…そう、ですか?ありがとうございます」
「んっ、ふぁ……」
余裕のある風に答えながら、制服の裾で乱暴に口許を拭うと、調子に乗ってもう一度口付けた。ゆるゆると絡んでくる舌を捉え、そのまま互いの熱を奪い合うような深い深いキスをする。
その途中で、昼休みの終了を知らせるチャイムが鳴った。咄嗟にシャツのボタンへと掛けていた手を引っ込める。ロイド先生は僕の手を掴み、胸元へと導くと、薄い唇で「はやく」と音も無く呟いた。
「……先生が、生徒を怠けさせていいんですか?」
ロイド先生は何も言わない。ただ、試すように微笑んでいるだけだ。
(僕がどうするかなんてお見通し、という訳か……)
――――悔しいが答えは決まりきっていた。
「ふ、ン、あっ、あっ、あぁ…っ」
「ロイドせん、せぇ・…っ」
正確なスライドを繰り返すだけで、敏感に反応を返してくる。頭の芯が痺れるような、甘い喘ぎ声。柔らかく締め付ける肉壁の感触はひどく甘美で、理性を揺さ振られる。セックスをしているという実感は無く、只、ロイド先生を求めるのに必死だった。
「スザクくっ、もっ、むり、いくぅ……っ」
ロイド先生のものの先端は開き、透明な露が玉になって浮いている。瞬間、尋常ではない締め付けが襲い、内臓まで吸い取られるような感覚に、僕はそのまま熱を吐き出した。
「あっ!…ひっ、待っ……ア!」
「すみません……待てそうに、ない、です…ッ」
乱れる呼吸を整える余裕も与えずに、細すぎる腰を掴み、より深く、奥まで犯していく。より敏感になっている身体は、太腿の内側を撫でるだけで、ひくんっと跳ねた。僕の腹を汚したばかりだと言うのに、ロイド先生のものは次の吐精に向け、ゆるゆると勃ち上がり始めている。
「待っ、くる、しぃ、よぉ……っ」
ハッとして律動を静めると、ロイド先生はぐったりとしながら、薄い胸を忙しなく上下させていた。緩慢な動きでさえも苦しいのか、泣きそうな声で懇願されるのは嗜虐心をそそられる。だが、理性でぐっと押さえつけて、苦しそうに喘ぐ胸をそっと撫でた。少しだけ朱に色付いた肌は滑らかだが、しっとりと汗で湿って熱を持っている。指先から彼の心臓の音が伝わってくるのを感じて、僕はドキリとした。 黙っていると蝋人形のようで、血色の無いロイド先生を見ていると、僕はいつも不安になる。確かな鼓動を認めて、僕は安堵の溜め息を吐いた。
ロイド先生の呼吸が落ち着き始めた頃、舌先で鎖骨をなぞるように舐め上げながら、ゆっくりと律動を再開させる。
「んっ、スザク、抜い、て……後ろから…して……?」
「…わかり、ました……っ」
思わず、声が震えた。濡れたものを引き抜いて、ロイド先生を反転させる。腰を突き出すような格好に、僕は思わずはっと息を呑んだ。先程まで僕を飲み込んでいた孔は、ひくひくと蠢き、まるで次に来る悦楽を今か今かと待ちわびているよう。柔らかな尻を掴んで、ひくつくその場所を舌で刺激すると、ぴちゅっといやらしい音がした。
「ふぁ……あ……っ、スザクの舌……気持ちいぃ…っ」
「…ん、舌でイッちゃうの、勿体無いですね……今、挿れます…」
「ひ、あっ、あぅ……っ」
仰け反る白い背中、くっきりと浮き出た肩甲骨。細い首筋の薄い皮膚は、なんとなく歯を立てたくなる。犬歯を舌先でなぞり、真っ白な項につぷりと歯が突き刺さる瞬間を想像して、ぶるりと身体が震えた。項に唇を落としながら右手を前に回し、やんわりとロイド先生のものを包み扱き始める。そして、ゆっくりと律動を開始するのと合わせるように、手も動かした。ロイド先生の先端から溢れ出た蜜によって、手がぐちゅっぐちゅっといやらしい音を立てた。
「んっ、あっ、ぁあ―――…っ」
達する瞬間、声が高くなった。ぐっと締め付けられ、ぞくぞくぞくっと背筋に電撃のようなものが走る。僕はぼんやりと意識が霞かかるのを感じて、次に来る射精の快楽を耐える為、ぎゅっと目を瞑った。
「ロイド先生?大丈夫ですか?」
ぐったりとベッドに横たわっているロイド先生に労りの言葉を掛け、柔らかな髪を優しく撫でる。ロイド先生は何も答えない。どうやら疲れて眠ってしまったらしい。カーテンで仕切られた先に見える扉は、きちんと鍵が掛っている。それを再び確認してから、ロイド先生の隣に寄り添うように横たわった。眠るつもりはなかったけれど、規則的な寝息を聞いている内に、いつの間にか穏やかな眠りに引き込まれていった。