Why?Why?Why?






とても切ない。それは気付いてくれない彼へ対してのもやもやとした気持ちであったり、男を好きになってしまった自分へ対しての憐れみの気持ちだったりする。どうして彼を好きになったりしたんだろう。ただの友達のままでいられたらよかった。きっかけはなんだったんだろう。些細すぎて思い出すことは出来そうにない。いつのまにか好きになっていた。止められなくなっていた。うじうじ悩んでは当たって砕けてみようと決意しても、結局出来なくて挙動不審になる。彼といるとドキドキして、ドキドキして、心臓が全力疾走する。俺は彼に恋をしていた。



週一回のミーティングの後は、部長と副部長つまり俺と鏡夜の二人で細かい打ち合わせをするのが常套だ。バインダーに挟まれた紙に俺の意見を纏めていた鏡夜がふいに顔を上げる。そして、ちらりと俺を見た。それだけで心臓がドキドキバクバクしてきて身体の中に熱が生まれる。そんな俺に気付く様子の無い鏡夜は、また目を伏せて静かに切り出した。

「…最近、大人しくなったんじゃないか?何か心境の変化でも?」
「なっ何もないよ!」

半ば叫ぶように返すと、くす、と鏡夜が綺麗に笑うのでつられて俺まで笑顔になった。見透かされているのだろうか?口元に充てられた神経質そうな細い指、その奥にある薄赤い唇に釘付けになる。鏡夜を形作るものすべてが綺麗で、宝石みたいだった。

「…お前って、つくづく嘘吐くのが下手だよな」

眼鏡の奥の瞳がすうっと細められた。ドキッとした。柔らかい笑みを浮かべたまま鏡夜は続ける。

「まあ……それがお前の良いところか」
「え…?」

き、きき鏡夜に褒められた!それを理解した瞬間に、頬の筋肉がゆるゆるになって口元が自然と笑みを象った。好きな人に褒められるのはこんなにも嬉しいことなのだ!今までたくさんの賞賛を受けてきたが、その中でも一番嬉しくてたまらない!

「はは、アホ面」
「な!鏡夜ひどい!」
「下校時間だ。環、帰るぞ」
「こ、こらっ!無視するな!てゆうか待て!」

いつの間にか荷物を纏めた鏡夜は立ち上がり歩き始めていた。大理石の床が軽い音を奏でる。

「待ってってば!」

咄嗟に鏡夜の腕を自分でも驚くくらいがっしりと強く掴んでいた。後ろによろめいた鏡夜を受け止めると密着したことに動揺してしまい一緒になって尻餅を着いた。

「痛…」
「ごごごめん鏡夜!!怪我は無い!?」

脚の間に鏡夜がいた。それだけでもドキドキするのに、後ろから抱き締める形になっていて、ふわりと鏡夜の匂いがして、どうしようもなくくらくらした。ああ、ああ、どうしよう!鏡夜が近い!こんな近くに鏡夜がいる!理性が揺らぐ、好き、好き、すきだ!


「すき、です」

ああ、俺は何を言っているのだろう。口走った言葉に、俺は目の前が真っ赤に染まるのを感じた。