亭主関白?カカア天下?








「…お前は服の畳み方も知らないのか?」
「し、知らないわけじゃない!ただ、出来ないだけだ!」
「…偉そうに言うなこの馬鹿が」

そう、鏡夜に睨まれて、環は膝を抱えて小さくなった。うぅ…と情けない声を上げる環を、鏡夜は冷たく一蹴する。愛が足りないぞ鏡夜!と環は泣きそうになるが、何を思いついたのかすっくと立ち上がると、勝ち誇った笑みを浮かべ、鏡夜にビシッと人差し指を差し向けた。



「俺たちは、夫婦だ!!」



環が叫ぶように言うと、鏡夜は一瞬きょとん、としたが、すぐに環の意図を理解して、面倒臭そうに溜息を吐いた。そうだな、と子供を窘めるように何度か頷いてやる。こうやって環に乗ってやるのが、鏡夜の優しさであるということに、環は気付かない。

「…まったく不謹慎極まりないが、ホスト部の『公式設定』になっているのは認めてやろう」
「…その『公式設定』上、俺はお父さん、鏡夜はお母さん、ということになっているだろう!」
「……ああ」
「つまり!俺は夫で鏡夜は妻で!夫である俺は、家事をやる必要は、ないのだっ!」
「……………」

いつの時代の人間だ、と鏡夜は呆れたように環を見た。自信に満ち溢れた金髪の王子は、頭はすこぶる良いくせに、すこぶる弱い。その上に常識が無い。つまりは馬鹿だ。

だが、ハルヒの言葉を借りるなら、「環先輩も鏡夜先輩も普通じゃないです」である。つまりは『似た者同士』なのだが、鏡夜はそれを認めたくはなかった。

絶対に。



「えー…その代わりと言っては何ですがー…」
「…なんだ、ハッキリ言え」
「精一杯頑張らせて頂きますので!!」
「…一応訊くが、なにをだ?」

「愛のいとなみ?」
「しばくぞ」

本気で怒りを覚えた鏡夜は環の鼻を思い切り摘んで、ぐりぐりと揺すってやる。ふが、と苦しそうに呻いた環に、鏡夜は綺麗に笑った。これが通称『悪魔の微笑み』である。

「ちょっ!鏡夜ったら、そんな乱暴な言葉、どこで覚えてきたんだ!?」
「うるさい」
「こら、夫に向かってうるさいとは何だ!」
「亭主関白もいい加減にしろ。寝室に入れてやらないぞ」
「う、うぅ…」

また情けない声を上げた環は、これでは亭主関白ではなくカカア天下だと涙を流したのだった。